家族に仕送りしている方へ|国外居住親族の扶養控除 完全ガイド
家族に仕送りしている方へ
国外居住親族の扶養控除 完全ガイド
日本で働きながら、母国の両親や兄弟姉妹に仕送りをしている方へ。その仕送りは、条件を満たせば所得税と住民税を下げる「扶養控除」に使えます。ただし、年齢によってルールが大きく違い、特に30〜69歳の親族は「年間38万円以上の送金」が必須です。知らずに年末を迎えると、数万円の節税を逃してしまうこともあります。この記事で、要件・金額・書類・失敗パターンを一気に確認しましょう。
結論 ― まずこの3つだけ覚えてください
この記事の要点は、たった3点です。
- 年齢でルールが違います。16歳未満は対象外。16〜29歳と70歳以上は送金額の下限なし(証明書は必要)。30〜69歳は「留学中」「障害者」「年間38万円以上の送金」のいずれかでないと対象になりません。
- 2026年分(令和8年分)から所得要件が緩和されます。親族の合計所得金額の上限が 58万円以下 → 62万円以下 に上がり、対象になる人が少し広がります。
- 「税の扶養」と「健康保険・年金の扶養」は別制度です。母国の家族は健康保険の扶養には原則入れませんが、税の扶養控除は受けられる場合があります。混同しないでください。
扶養控除の基本 ― いくら税金が下がるのか
扶養控除とは、あなたが生計を支えている親族(家族)がいるとき、その人数や年齢に応じて、あなたの課税所得を差し引ける制度です。所得が小さくなれば、所得税と住民税も小さくなります。親族が日本に住んでいなくても(国外居住親族でも)、条件を満たせば使えます。
控除額は、親族の年齢によって次のように決まっています(所得税の金額)。年齢はその年の12月31日時点で判定します。
| 区分 | 年齢の目安 | 控除額 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 一般の扶養親族 | 16歳以上 | 38万円 | 最も基本の区分。両親や成人の兄弟姉妹など |
| 特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | 学費などがかかる世代のため控除が大きい |
| 老人扶養親族(同居老親等以外) | 70歳以上 | 48万円 | 海外に住む70歳以上の親はこちら |
| 老人扶養親族(同居老親等) | 70歳以上・同居 | 58万円 | あなたや配偶者と同居している場合のみ |
節税効果の試算例 ― 親1人で年 約71,000円
「控除38万円」は、そのまま38万円が戻ってくるわけではありません。控除額にあなたの税率をかけた分だけ税金が下がります。所得税率10%の人の例で見てみましょう。
※ あくまで目安です。実際の節税額は、あなたの年収(所得税率は5%〜45%の段階制)や他の控除によって変わります。親族が2人・3人と増えれば、その分だけ控除も積み上がります。逆に言えば、申告を忘れると毎年この金額を払い過ぎていることになります。
年齢別の要件 ― 最大の注意点は「38万円ルール」
国外居住親族については、国内の親族と違って年齢ごとに追加の条件があります。特に30〜69歳は厳しく、ここでつまずく人が最も多いポイントです。
| 親族の年齢 | 対象になるか | 送金額の条件 | 必要な証明 |
|---|---|---|---|
| 16歳未満 | 対象外 | ― | 扶養控除そのものの対象になりません |
| 16〜29歳 | 対象 | 最低額なし | 親族関係書類 + 送金関係書類 |
| 30〜69歳 | 条件つき | 留学中/障害者/年間38万円以上の送金 のいずれか | 親族関係書類 + 送金関係書類(+留学ビザ等書類 または 38万円送金書類) |
| 70歳以上 | 対象 | 最低額なし | 親族関係書類 + 送金関係書類 |
※ 「最低額なし」の年齢でも、実際に生活費を送っている証拠(送金関係書類)は必ず必要です。送金の記録がなければ、年齢を問わず認められません。また、どの年齢でも共通の前提として、親族の合計所得金額が62万円以下(2026年分)であることが必要です(変更点の章参照)。所得には母国での収入も含まれ、円に換算して判定します。
38万円の計算例 ― 月3万円では届きません
38万円は親族1人ごとの金額です。両親2人を対象にしたいなら、それぞれに38万円以上、合計76万円以上の送金(記録が分かれていること)が必要です。「だいたい月3万円送っているから大丈夫」と思っていると、2万円不足でまるごと対象外になるのが、このルールの一番怖いところです。
かんたん診断あなたの家族は対象? 30秒チェック
※ 2026年分(令和8年分)の基準で判定する目安ツールです。正式な可否は、会社の経理・税務署に確認してください。
シミュレーター38万円まで、あといくら必要?
目標:年間 380,000円(親族1人あたり)。年末にまとめて送るより、毎月コツコツ送る方が記録も安定し、不足に早く気づけます。
送金のルール ― 「どう送ったか」で認められ方が決まる
金額だけでなく、送金の方法と記録の残し方が審査の対象です。ルールはシンプルですが、1つでも外すと証明になりません。
✔ 認められる方法
- 銀行・送金サービス経由の海外送金(送金証明書・明細が残るもの)
- 家族カード(親族が使った分をあなたが支払うクレジットカード)― 利用明細が送金関係書類になります
- 電子決済手段による送金(記録が残るもの)
✘ 認められない方法
- 帰国する知人・友人に現金を託す ― 記録が残らず、証明できません
- 現金を手渡しする ― 同じく証明できません
- 記録の残らない方法は、金額が大きくても「送っていない」扱いになります
必ず守る3つの原則
① 親族ごとに別々に送る。たとえば「母への送金」としてまとめて送ったお金は、父や兄弟の分としては数えられません。対象にしたい人それぞれの名義・記録で送ってください。
② 生活費・教育費として送る。送金関係書類には、生活費または教育費の支払いのために送ったことが分かる必要があります。
③ 証明書は捨てずに保管する。会社に提出しなかった証明書も含め、税務署から求められたときに見せられるよう、すべて手元に保管してください。
2026年分(令和8年分)からの変更点 ― 所得要件が緩和
税制改正により、2026年分の所得税から、扶養に入れるための所得の上限が引き上げられました(令和8年12月1日施行の改正に連動)。「去年は所得が少しオーバーして対象外だった」という家族が、2026年分では対象になる可能性があります。
| 項目 | 令和7年分(2025年) | 令和8年分(2026年) |
|---|---|---|
| 合計所得金額の上限 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 給与収入のみの目安 | 約123万円 | 約136万円(=所得62万円+給与所得控除74万円) |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円 |
| 基礎控除(基本額) | 58万円 | 62万円(所得に応じて上乗せあり) |
※ 親族の所得を判定するときは、母国での収入も含め、円に換算した合計所得金額で見ます。パート収入などがある家族は、金額を確認してから申告しましょう。あなたの自身の年収は、38万円の送金要件には影響しません(影響するのは節税額の大きさ=税率です)。
特定親族特別控除 ― 19〜22歳の「働きすぎ」でも段階的に控除
19歳以上23歳未満の親族は、本来なら控除63万円の「特定扶養親族」です。しかし、アルバイトなどで所得が62万円を超えると、扶養控除からは外れてしまいます。そこで用意されているのが特定親族特別控除です。
必要書類チェックリスト ― 年末調整までに揃えるもの
国外居住親族の扶養控除では、「親族であることの証明」と「送金の証明」の2本柱が必須です。母国から取り寄せる書類は時間がかかるため、秋のうちに準備を始めるのが安全です。
- 全員必須親族関係書類外国の公的機関が発行した書類で、親族の氏名・生年月日・住所と、あなたとの続柄が分かるもの(戸籍関係書類など)。日本語以外の書類には日本語訳が必要です。原本を提出します(パスポートは写しで可)。複数の書類の組み合わせでも認められます。
- 全員必須送金関係書類その年に、生活費・教育費として送金したことを示す書類。銀行等の送金証明書・明細、家族カードの利用明細、電子決済の送金依頼書など。親族ごとに必要です。
- 30〜69歳で留学・障害者に当たらない人38万円送金書類その親族への年間送金合計が38万円以上であることを示す送金関係書類一式。
- 30〜69歳で留学中の人留学ビザ等書類留学していることを示す、ビザまたは在留カード等の写し。
※ 会社(給与支払者)へは、扶養控除等(異動)申告書とあわせて上記の書類を提出します。親族関係書類の具体的な様式(地元当局の確認書など)が認められるかは会社ごとに確認方法が異なる場合があるため、早めに経理担当へ相談するのが確実です。
税と社会保険は別もの ― 混同が一番もったいない
「家族を健康保険の扶養に入れられなかったから、税金もダメだろう」と諦めていませんか? それは制度の混同です。2つはまったく別の仕組みで、判定も別々に行われます。
税 ― 扶養控除(この記事の制度)
国内居住の要件はありません。年齢・所得・送金の条件を満たし、書類を揃えれば、国外居住親族でも控除を受けられます。
健康保険の被扶養者・国民年金第3号
2020年4月1日から国内居住要件が導入され、日本に住所がない家族は原則として被扶養者になれません。留学・海外赴任への同行など「海外特例」に当たる場合のみ例外的に認められます(被扶養者(異動)届等の手続きと個別判断が必要です)。
よくある失敗 5つ ― 実習生・特定技能で特に多いパターン
- 知人に現金を託して送る帰省する同僚や知人に現金を渡して家族に届けてもらう方法は、記録が残らないため送金として一切認められません。手数料を惜しむと、節税額(年 約7万円の目安)ごと失います。必ず銀行・送金サービス・家族カードなど記録の残る方法で。
- 家族分をまとめて1人に送る「母に100万円送ったから、両親2人分になるはず」は誤りです。送金は親族ごとに別々の記録が必要です。2人を対象にしたいなら、2人それぞれに分けて送ってください。
- 年末に慌てて計算し、38万円に届かない月3万円ペースでは年36万円で2万円不足し、30〜69歳の親族は対象外になります。年の半ば(6〜7月)に一度、累計額を確認する習慣をつけましょう。上のシミュレーターでも確認できます。
- 12月の送金日が年をまたぐ年末ギリギリの送金は、着金・処理のタイミングで送金日が翌年扱いになることがあります。その年の金額には入らないため、12月は中旬までに送るのが安全です。
- 書類の氏名・住所が一致していない親族関係書類とパスポート、送金の受取人名義で表記が違うと、同一人物と確認できず差し戻されることがあります。ローマ字のつづりまで含めて、提出前に必ず照合を。
手続きの流れ ― 年末調整で申告するのが基本
- STEP 1申告書に記入する
会社から配られる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、扶養に入れる親族の氏名・生年月日・住所・所得の見積額などを記入します。
- STEP 2証明書類を会社へ提出
親族関係書類と送金関係書類(必要に応じて38万円送金書類・留学ビザ等書類)をあわせて提出します。締切は会社ごとに異なるため早めに確認を。
- STEP 3年末調整で精算・還付
会社が年末調整で税金を再計算し、払い過ぎ分が12月〜1月の給与で戻ってきます。間に合わなかった場合は、自分で確定申告をすれば同様に控除を受けられます。
※ 年の途中で送金先の親族が増えた・減った、所得見込みが変わった等の異動があったときも、申告書の訂正が必要です。分からない点は、提出前に会社の経理担当へ相談してください。
